病気のメカニズム

我々の体は口から食べたものを内蔵で消化・吸収し、呼吸によって取り込んだ酸素でこれらを燃焼してエネルギーとなって、その燃焼エネルギーを利用して日々生活しています。
しかし、エネルギーを得て代謝を行えば、車、船、飛行機などと同じように最後には必ず代謝熱が残ります。
我々の体はこの代謝熱を呼気や汗、大小便などで排熱していますが、最も多く排熱しているのは、全身の皮膚面なのです。

生まれたばかりの赤ちゃんに触れてみて下さい。
どこに触れても熱いくらい温かいですよね。
これは全身がまんべんなく排熱を行っている証拠です(どんなに暑くても寒くても体温は37℃を維持)。

皮膚呼吸という言葉は一般にもなじみがあると思いますが、我々は無意識のうちに口や鼻で呼吸しているのと同様に、皮膚面からも呼吸をするかのように代謝を行って熱を捨てているのです。
皮膚から熱を捨てることを、専門用語では皮膚蒸泄(不感蒸泄)といいます(不感蒸泄は故河合 斎先生命名)。

 

皮膚蒸泄は16世紀にイタリアの医師サントーリオ・サントーリオ(ガリレオ・ガリレイの友人1561~1636)によって精密に測定され、証明されています。

その理論によると、我々の食べたものはすべて完全に代謝によって燃焼されて大半が熱になった後に、残った熱を全身の皮膚面へ分散させ、水分ととともに気化・放熱することによって余分な熱を捨てているというものです。
赤ちゃんの皮膚がどこをさわっても温かいのは皮膚蒸泄による水分と熱によって蒸されているからもちもち、ふわふわなのです。

実はこの皮膚蒸泄という仕組みは今から約2000年前に『傷寒論』という医学書を書き残した張仲景はすでに知っていたと考えられます。
サントーリオ・サントーリオよりじつに1500年も前になります。
東洋医学では栄気(栄養)と衛気(代謝能力)のバランスにより、皮膚蒸泄を正常化して自身の代謝熱を全身の皮膚面から水分の気化熱として排熱していることを認識して処方構成がされているのです。

 

病気というものは現代医学では細菌やウイルスに感染が病気の原因(コッホの細菌学やウィルヒョウの病理学の唯物論に基づく)はたまた食品添加物の取りすぎで病気になるなど、すべて自分を取り巻く周囲の環境のせいといった調子で語られますが、ウイルスや雑菌は昔から共生してきたものですし、いまどきの食品には多かれ少なかれ、食品添加物は使用されています。
しかし、これらの唯物論ではあまりにも病気にかかる率が少なすぎるのです。
もしこれらが病気の原因ならばもっと病気にかかる人々が多くなければなりません。

すべての病気を同一に並べて「これが原因」です。
という確固たるものはないのでしょうか?
病気の原因を周囲の「唯物論」で説明するにはその原因となる「モノ」で病気にかかる率があまりにも低すぎるように思います。

 

では漢方の発祥地である中国の古人は「病気」をどう捉えていたかということが象形文字である漢字」に込められています。
「病」という漢字は「疒」に「丙」(火の兄)と書きます。

人間の体は、食べたものを燃焼させてエネルギーを取り出す有機燃焼体ですから、まさに(陽気エネルギー)を生み出す元、すなわち火の兄=ひのえ、そのものです。

ここにやまいだれがかかっているということは、漢字の頭部が蓋をされ、側面(全身の皮膚面)が蓋をされているということから頭部から側面(皮膚面)に渡って全面的に蓋をされて、熱がこもっていることをいみしています。
これらのことから「病」とは自分の代謝熱が全身から排熱できずに内攻し、臓器や器官に炎症を起こすということを示していることがわかります。

つまり「病」とは前述の皮膚蒸泄が低下して自分の代謝熱が排熱できずに内側にこもって、自分の体を自分自身の代謝熱で炙って炎症を起こしているということがわかります。

現代医学でいう細菌・ウイルス類や化学物質で病気が起こるのは普段から養生が悪く、自分の代謝熱で臓器や器官を傷つけて抵抗力(代謝能力、免疫力など)が弱り、その弱った組織にこれらが作用するので、ダメージを受けやすいと認識できます。
細菌やウイルスにふれても大半の健康な方が病気にならない理由はここにあります。

動物(毛もの)たちは、自分の代謝熱を体毛に広げて表面積を広げることで排熱しています。
しかし季節変化のあるミ地域では周囲の気温や湿度に合わせて夏毛と冬毛を毎年2回も生え換わらせる必要があり、莫大エネルギーを必要とします。
実際ウサギなどは換毛期になると食欲が増したり減ったりするようですので、ペットとして飼っている方はよく観察してみると興味深いかも知れません。
このように毛によって熱を捨てるには換毛という身体的負担もあるため、いわば省エネのため我々人類が身に着けた排熱システムが「皮膚蒸泄」なのです。

木の実や果物、穀類、炭水化物を常に摂取できるようになった我々の御先祖様たちはこれら炭水化物などを食する結果常に安定的に生成されてできる水分に代謝熱を載せて皮膚面まで引き出し、薄く広げることにより全身の皮膚面からは安定して気化・排熱できる「皮膚蒸泄」を身に着けました。
しかしこのシステムを身につけたために重大な欠点も背負うこととなったのです。

水はこの地土球上で最も沸点の高い物質(100℃)であるために、皮膚面温度の冷えや湿度の高さが問題となりやすく、どちらの場合にも水分の気化ができず、排熱もできません。
したがって皮膚面の冷えや高湿度の環境下にいつもいると、皮膚面から代謝熱の排泄ができずに熱は体内深部に回って全身至る所に炎症をおこします。

 

これが大半の「発病」のメカニズムです。

つまり我々人類の皮膚蒸泄能力は温度・湿度など極めて微妙な気象条件によって左右されるのです。

唐の時代に生理解剖と気象のすべてが書かれた「素問」「霊枢」という書物があります。
この書物の後半には司天(天の気)と在泉(地の気)により天候がどう変化し、その年にはこういう病気になりやすいと記載されています。
それによってわかることは、太古の昔から、我々の体調は気候との相対的な兼ね合いによって左右されるものだと認識されていたということです。

おそらく「傷寒論」の編者、張仲景もそれを知っていたものと思われます。
ですから教科書で勉強した通りの処方ではなく、その土地の気候や生活環境を考慮しての滋養や薬の処方をしなければ体調は改善しないと考えられていたといえます。

現代人はあまりにも過剰に水分を摂りすぎており、全身の皮下に集まる水分が増加しているため、お肌(胸元、二の腕、お腹、お尻、太ももなど)の冷たい人が多く、これが全身の皮膚蒸泄を止めてしまっています。
どこかお肌の冷たい方は自分の代謝熱が排熱できずに内攻し、自分の代謝熱で自分の内臓や器官を炙って炎症(頻繁な頭痛、腹痛、腰痛など)を起こしている人が大半です。

 

どこかお肌の冷たい場所のある方で体調不全でお悩みの方は是非ご相談ください。
今までとは全く違う世界が待っているはずです。