日本人に合った治療を

薬剤師 薬学修士 笠井 良純

 

私は家業が漢方薬局であったことから薬学を目指して精進してまいりましたが、生薬学を極めるために大学院まで進学致しました。

大学では体系化された漢方を教えるカリキュラムが全くなく、このままでは漢方が身につかないと危機感を覚え、宮内庁の指示で東大寺正倉院の薬物調査をされた薬学博士 渡邊 武先生の門下生(日中医薬研究会入門)として今日まで精進して参りました。
そのなかで先生から教えて頂いたことは「日本人には日本人に合った漢方が必要」ということでした。

先生は全国に「日本人に合った漢方」の普及にご尽力され、今ではどこの薬局でもポピュラーになった「陰陽五行説」の五角形の表を全国の薬局に普及されました。
また先生のご専門の生薬についても「日本生薬学会」の発起人の一人として名を連ね、生薬の世界にも名が知れ渡っております。

先生には何回か現地の漢方を知るために勉強で中国にも連れて行って頂き、肌でそれを感じ取って参りました。
そして感じたことは「昔と今では環境も食生活も全く違う」ということでした。

研究会で研鑚を積むうちに、生薬も昔とは違うはずだということに気が付き、バイクや車で丹沢・奥多摩・秩父や那須高原などを約30年近く駆け巡り、「生薬(または類縁植物)がどのようなところでどんな風に生活しているのか」をつぶさに観察して、植物は標高によって分布が異なることに気がついたのです。
そして「生薬の薬効を語るには生薬が自然環境を克服して生活する能力を治療に活かしているに違いない」と思うようになりました。

二千年も前の人々が植物学や生薬学、ましてや薬理学など知るはずもなく、近代科学的な理論では貴重な古典の解釈はできないと確信しましたから、先ず古人たちのように自然の中で植物を観察しようと山野を駆け巡ってきたのです。
そして研究会で研鑚するうち「熱エネルギー」がキーポイントになることに気がついたのです。

例えば桂皮(シナモン)は二十数m(5,6階建のビル)にもなる代謝の旺盛な高木ですが、昼間は実にトン単位の水を樹皮下を通して汲み上げています。
考えてみると毎日ビルの5,6Fまでバケツリレーで水を汲み上げれば、汗だくになり、水をくみ上げる「仕事」をすれば樹皮下に熱がこもる。
これを冷ますために水を汲み上げている。
なるほど桂皮(シナモン)はサウナのような高温・高湿度のジャングルで水を汲み上げているから樹皮下にこもる熱をその場で揮散させるために香り高い成分を含むのだ(その他の成分は熱が暴走して活性酸素の発生を阻止する)と分かり、古人の観察眼に達した気がしました。

これらのことは私が主宰する「生態生薬学」により今後HP,FaceBookなどで審らかにしていきますが、いずれにせよ日本人には日本人に合う漢方が必要であるということがますますわかってきたところです。

日本で珍しい生薬や栽培の難しい生薬は日本人には向きません。

漢方薬なんて効かないなんて諦めている方にこそ、是非当店へ一度ご相談下さい。
お待ち申し上げております。

 

笠井 良純

-執筆著書-

『体内の過剰な水分が恐ろしい病気を招いている』