漢方は本場中国なら良いというのは間違い

皆さんはご御存知ないかもしれませんが、中国でいわゆる漢方(中国では中医学という)を学ぶ中医学院では、中国本土が極めて広いために、地域差による気候や食生活の違いによる体質の違いを学ぶようにカリキュラムが組まれていて、そこで学んだ中医師達は、気候や食生活の違いを考慮した漢方薬を処方するように教育されています。


例えば、北京や西域では乾燥が強く一日や一年中での気温差が大きいために、身体に潤いを保たせ、寒さ・暑さに対応できる(厳密には季節ごとに異なる)処方が中心になります。一方南方の四川・雲南などの地域では標高が高いので酸素が乏しく、紫外線も多く、気温変動が大きく、体内に水分がたまって冷えを受けたり、逆にこもった熱が水分とともに体内で煮えたぎるようになって身体が熱を受けやすいので、酸欠や水分代謝に重点を置いて安定した代謝になるようにしています。その中間が上海や台湾付近の中医学になります。


現在の日本の気候・体質・食生活・生活スタイルなどを考慮すると、この中間の上海や台湾あたりの中医学を参照とするならよいでしょうが、どうも日本人は首都北京付近の中医学が一番権威があるものと捉えているせいか、身体に潤いを保たせる四物湯類などの滋潤剤や、脂溶性の熱を揮散させる香りの強いハーブ類ばかりを処方することを勉強してマネする日本の漢方家が多く、必ず間違っているとは言えないものの、体質に合わないという人が多くいるのも事実で注意が必要です。


日本はこんなに小さな島国ながら「きのこ」の種類と量は世界でもトップクラスです。飛行機で空から大地に目をやれば、先進国のなかでこれほど緑の多い国はありません。日本は世界でも有数の湿度の高い国なのです。ビルやマンション等の建築物が、建てた直後から「カビ」が問題となるのも日本特有です。


このような地域の医療としてふさわしいのは、やはり水分代謝を中心とした医学であるべきです。また近年、温暖化が進んでいることから、漢方を学ぶ方は四川・雲南地域や台湾などあるいはもっと南方のベトナムやフィリピンの医学を参考にする必要があります。

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