葛根湯の奥は深い
皆さんは落語の「葛根湯医」のお話をご存じでしょうか?
頭が痛ければ葛根湯
お腹が痛ければ葛根湯
何でもかんでも葛根湯
とどんな症状でも葛根湯を投薬すれば良いというヤブ医者を皮肉ったおなじみのお話です。 でもこのお話に出てくる葛根湯の使い道の本当の意味をご存じの方は少ないのではないでしょうか?
真の葛根湯の働きは?
葛根湯は風邪のときにだけ飲む単なる発汗剤ではありません。
何度もお話しているようにわれわれの皮膚表面は全身の代謝熱を気化・放熱し続けることによって一定の体温を保ち、生命現象を営んでいます。
風邪の場合は皮膚からの気化・放熱ができなくなってこもった熱が出場所を失って、肺や大腸に回って咳や下痢になるのですから、この異常な熱の流れを正常にもどせば肺や大腸への過剰な代謝熱の流入はなくなります。 このように皮膚の正常な気化・放熱機能を立て直すのが葛根湯なのです。
ですから皮膚の気化・放熱の正常化で体内の熱や冷えの偏在(かたより)が元にもどる場合であれば、どんな症状にも使用できるのです。
咳・濃い痰など ・・・ 肺に集中した熱を全身の皮膚に分散・放熱して炎症の元となる熱エネルギーを冷まし、免疫反応を正常化する
下痢・腹痛など ・・・ 消化器官や内臓に充血して発生している熱を体表へ分散・放熱して炎症の元となる熱エネルギーを冷ます
頭痛・肩凝りなど ・・ 頸部や頭部に充血して発生している熱を体表へ分散・放熱して炎症の元となる熱エネルギーを冷ます
鼻炎・鼻づまり ・・・ 鼻粘膜に充血して発生している熱を体表へ分散・放熱して炎症の元となる熱エネルギーを冷ます
皮膚のできもの ・・・ 皮膚の炎症局所に充血して発生している熱を皮膚全面に分散・放熱して炎症を冷ます
以上のことからわかるように多くの病気の症状が血流の偏在による炎症と冷えの偏在によるものであることがわかります。 これは現代医学でも共通することで、例えば胃痙攣の場合にブスコパン(臭化水素酸スコポラミン)を与えると即効性があるのは、副交感神経の異常興奮をブスコパンで遮断して交感神経(主として体表を司る)と副交感神経(主として体内を司る)のバランスを取ることで充血を分散して炎症を止めていることから、漢方薬に近い発想であることがわかります。
「炎症」や「冷え」などが「偏り」によるものなら「葛根湯」!
このように血流の偏在による炎症と冷えの偏在が原因となっている病気の場合はその偏りをなくして代謝に「流れ」をつければよくなるわけですから、かなり多くの病状の改善に「葛根湯」は威力を発揮できるのです。 ただし葛根湯はあくまでも発汗剤ですので、皮膚の代謝に問題がある場合にのみ対応するという条件付きです。
誰がどんな病気でやって来ても患者をろくに診察しないで「葛根湯」を処方しているわけではありません。
2009/11/16